新たな可能性を秘めた「和紙」物語
-和紙のそもそも編-/関野菜子

「和紙」と聞いて、どんなものをイメージしますか?
障子、便せん、古い書物、ざらざらした紙…こんなところでしょうか。
どれも、今の私たちにはすこし遠い存在。
たまに、和紙で作られた便せんに手紙を書いてはみるものの、普段は携帯で連絡を取れば十分です。

とはいっても、わたし自身、大の紙好きです。ノートとかポストカードとか、レターセットとか、必要最低限をはるかに超えた量を持っています。集めたくなっちゃうんですよね。
その影響かは分かりませんが、前々から“紙漉き”という言葉に妙に惹かれていました。

なにか分からないものに惹かれるがまま、
埼玉県小川町、「細川紙」という和紙の生産地を訪ねることに。

今回の物語の主人公は、「手漉き和紙 たにの」さんです。
ご主人の谷野全さんが案内をしてくださいました。

今まで気づくことのできなかった、和紙の新しい可能性にワクワクできる物語です。
今回は、前編として「和紙のそもそも編」をお送りします。

 

和紙ってどんな風に作られているの?

そもそも、和紙ってどうやって作られているのだろう。
紙漉き、という言葉は聞いたことがあってもその前はどんな工程があるのだろう。

そんな、“そもそも”を最初に聞いてみました。

谷野さんの工房がある小川町は、水がきれいなことでも有名で和紙作りにはぴったりの場所です。

もともと、谷野さんご夫婦は会社勤めだったそうですが、小川町で、伝統工芸の職人さんを育成する研修に奥様が参加することをきっかけに移住。

15年ほどは奥様一人で紙漉きをしていたのだとか。仕事を探して、お金にするのは難しく最初は全さんがサラリーマンとして家計を支えていました。

奥様の好きなことを尊重して、今では一緒にやられているお二人はとてもすてきですね。

いよいよ、工房の中にお邪魔します!

「もともと給食センターだったからね。広くて水を流しても平気だし、便利ですよ。」

「手漉き和紙 たにの」には現在、職人さんが5名いらっしゃいます。

フランスから和紙を学びに来ている方もいらっしゃいました。外国人の方が学びにくることや興味を持ってくれることも多く、注文も海外からのものが増えているそうです。

和紙は、楮(こうぞ)という植物の皮と芯の間を使います。

まず、この木を大きな釜で茹でて外側の皮をむきます。この100キロも入る大きな釜も作ったそうです。100キロのうち、紙になる部分は12分の1ほどだとか。

原料は、畑を借りて自分たちで育てたり農家さんに育てていただいたりしているそうです。

楮の農家さん自体は、少ないそうですが楮は手間もかからないので、他の野菜を育てる農家さんでも空いているスペースで育てることができます。

皮をむいたものを乾燥させ、それを洗ってあく抜きする。

あく抜きしたものをたたいてトロロアオイと合わせて漉きます。このトロロアオイの根っこが、とろとろねばねばでオクラの仲間だそうです。このトロロアオイは冬しか取れないので、基本的に冬にしか紙漉きはできません。夏はトロロアオイが効きづらく、漉きづらいためです。

漉く前の和紙は、ふわふわで綿菓子のようでした。こんな姿だったとは、驚きです。

この状態から、紙漉きをしていきます。時期が合わず、実際の作業は見ることはできなかったのですが、これが皆さんもきっと目にしたことのある紙漉きのための機械です。

こういった機材は、前に使っていた方から譲り受けたものだそう。技術の継承と共に道具も受け継がれています。

ここまでで、和紙の完成です!

 

和紙が活躍する場所

全国には、様々な種類の和紙がありますが基本的な作り方は同じだそうです。

ただ、紙の漉き方が違っていたり、皮の剥き加減が違うことで、和紙自体の色や手触りがそれぞれの産地で変わってきます。細川紙の特徴は、繊維が長く、丈夫なこと。

漉いた和紙は、重箱やお菓子の包装紙として活躍しています。

藍染めで染めているものや、お花などを一緒に漉いているものもあります。

漉く際に、型をつければ模様をつけることもできます。

絹(繭の状態のもの)を原料として使い、楮と合わせて漉くことでうちわなどに使われることもあるそうです。

さらに、特大の和紙まで!ここまで大きなものを作ってくれる場所は珍しいです。

最近では、ホテルや商業施設の内装事業も増え、そこで使われることがほとんどですが、ドレスに形を変えたりしても活用されます。
ウェディングドレスが和紙なんて素敵です。

「細川紙を漉ける技術があれば、なんでもできるんじゃないかと思ってみなさん来るんだと思うんですよね。」

技術を買って、デザイナーやメーカーの方がやってくる。

その中でも、「手漉き和紙 たにの」として選ばれているのはいつでも「作りたい」を叶えてくれる、谷野さんの対応力にあると感じました。

紙漉きの仕事を見つけ、食べていくのは大変。和紙の用途は暮らしの変化と共に減っていってしまっています。一方で、話を聞いているうちに和紙には意外と魅力が溢れていることに気がつきました。

もともと生活の様々なシーンで活躍していた和紙。それは、和紙にたくさんの魅力が詰まっていたから。なによりも丈夫、それに一度墨で書いた文字は消えないほど水に強い、それに紙だからとにかく軽い、漉き方を工夫すればアレンジし放題。

和紙の魅力に気づき始めましたか?

ここから見えてきた和紙の新しい可能性はとはいったいどのような姿なのか。

それは、次回の物語でお話することにしましょう。

今日は、和紙の“そもそも”の物語でした。
最後まで読んでくださってありがとうございます。

ここまでお付き合いくださったみなさんの毎日が、心地よくきらめき続けますように。

「紡」をつむぐ人
関野菜子

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